「才能と努力」~為末大と島田紳助
成功者が語る事は、結果を出した事に理由付けしているというのが半分ぐらいだと思う。アスリートもまずその体に生まれるかどうかが99%。そして選ばれた人たちが努力を語る。やればできると成功者は言うけれど、できる体に生まれる事が大前提。
— 為末 大 (@daijapan) October 21, 2013
この発言を受けてネット上では「身も蓋もない」「道は努力で切り開くもの」などと批判が殺到し、「炎上」した。
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何をするにもこの世は才能である。僕はこの意見に賛成だ。これに異を唱える人は現実を直視していないか、そうと知りながら夢を見ていたい人かのどちらかだと思う。僕はこの発言をめぐる論議を始めから全て知っているわけじゃないけれど、少し勘違いしている人がいるんじゃないかと思う。それは、「努力では超えられない才能もある」ことを「どんなに努力しても結局無駄」という意味に捉えているのではないか、ということである。
為末さんは決して努力を否定していない。「自分に合った場所(自分の才能が活かせる場所)で努力せよ」と言っているのだ。そしてそのために、時には現実を知りその場から撤退することも必要なのだ。このことを人は「諦め」と呼び、ネガティブなイメージを持つ。しかし為末さんの著書『諦める力』によると、「諦める」という言葉の語源は「明らめる」らしい。仏教においてこの言葉は「ものごとの真理を明らかにしてよく見極める」という意味で使われ、むしろポジティブなイメージを持つという。
才能は人それぞれで異なっている。誰もがイチローになれるわけではないのだ。しかし例えば野球選手なら、はじめは誰もがイチローを目指して頑張るだろう。しかし次第に、自分の実力と、他との実力差が鮮明になる。「目一杯努力しても、どうやら一番になるのは厳しそうだ」と悟った時点でそれを受け入れ、違うステージに移ろう。その方が幸せになれるし、楽しいよというのが為末さんの発言の真意だ。最初の場所で一番になれないのなら、一番になれる違う場所を見つけよう、ということなのだ。時間は有限である。その見極めを誤れば、取り返しのつかないことにもなりかねない。だからこうして、為末さんは警鐘を鳴らしている。
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為末さんと同じことを言っている人物がいる。島田紳助だ。
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例えばAという人物が5の努力をし、さらに5の才能を持っていれば、5×5=25で最高の結果が出る。逆にBと言う人物が5の努力をしても1の才能しかなければ、5×1=5で5の結果しか出ない。Cが2の努力しかしなくても、3の才能があればBに勝つ。
A:5×5=25
B:5×1=5
C:2×3=6
この場合Cは論外だとしても、Bがいくら頑張ったところでAには勝てない。もしCが5の努力をしても、Aには到底及ばない。
島田紳助はかつてオール巨人阪神の巨人のものまねを見て「これはものまねじゃ勝てないな」と感じ自身のものまねを封印した。さらに明石家さんまに出会い「こんな24時間明るいようなやつに正攻法じゃ勝てない」とスターになる道を「諦め」た。そしてどうしたかというと、自分にしか出せない「ヒール(悪役)」というキャラで売ろうと考えたのだ。結果は知っての通り、大成功と言っていいだろう。
【終わり】”一生懸命やってだめだったけど、自分に向いてなかっただけだ”負け惜しみと世間は言うかもしれないけど、気にしなくていい。世界はもっと広く、人間の能力はでこぼこしていて、一つの事に縛られるなんてもったいないと僕は思う。
— 為末 大 (@daijapan) October 27, 2013
為末さんも島田紳助も、言っていることは同じだ。「才能」というものが存在することを受け入れ、場合によっては撤退し、自分が力を発揮できるフィールドを探す。それを「逃げ」と呼ぶのか「戦略」と呼ぶのかの違いなのだ。
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