朝倉未来の敗戦について

見事に喰われてしまった・・・
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アンチもいるだろうけれど、なんだかんだ言ってもMMA好きは朝倉未来が好きな人がほとんどなんじゃないだろうか。
僕もファンの一人として、KO直後は茫然としてしまったし、悲しくなった。
MMAファイターがキックボクシングの試合をするわけで、正直乗り切れないところはあったものの、
まずは負けないでくれと思いながら観ていた。うーん。
とはいえYA-MAN、すごかった。彼の勝利ではなく朝倉の敗戦、という広まり方だけど、勝者はきちんと称えたい。

なぜYA-MANとの試合を受けたのか

そもそもなぜ朝倉はこの試合を受けたのかについては、ファンの中でも議論はあったけれど、僕は以下の二点だと思っている。

1.ファイターとして復帰のきっかけを掴みたかったから
2.(格闘技界隈が)盛り上がるから

1と2はどちらが欠けても駄目だった。
まず前戦、ケラモフに何もできずに負けた。これはかなりショックだったろうし、本人も言うように一度は引退も考えた。
練習には力を入れていたようだし、クレベル戦と違って時間に余裕もあったなか入念に準備してあの結果だったとしたら、
自信を失っても無理はない。ただ、ケラモフは実際のところ強い。あれほど何もできないとは本人含め大方の人が予想していなかったとはいえ、
堀江との試合を踏まえれば、起こっても不思議でないことが起きたまでのことではある。
なので、再び強くなって勝ちを重ねていけば、リベンジもありうるという見方もできた。鈴木千裕がベルトを取ったことも追い風になったに違いない。
ただし、2か月ほど練習する気も起きないほど格闘技への気持ちが薄れていたように、復帰の道筋を作るのは難しかったんだろう。
それまでベルト争いをしていた選手で、実績も人気も得てきた選手なだけに、敗戦後のマッチメイクは難航した。中途半端な試合は組めない。
組めないというのは、おそらく朝倉本人のプロモーター的な視点と、選手としての誇り、どちらもあったと思う。
少し時間も経ち、格闘技への気持ちも戻ってきたとき、次戦をどうするか。表向きはまだ2か月休んでいるだけ、自分のペースでやると公言していたが、
朝倉本人もきっかけを探していたと思う。
そこに来てYA-MANとの話が舞い込んだ。しかもキックボクシングルールだ。
いきなりMMAとなるとカードを組むのが難しいが、キックボクシングは朝倉も未開拓の領域で、興味もあったはず。
朝倉はMMA選手としてはストライカータイプで、当然打撃には自信を持っている。
過去の敗戦を見てもクレベル、ケラモフには一本負けを喫しているわけだが、正直言って苦手分野だ。弱点を突かれたわけで、打撃で正面からやりあって負けたことはまだない。
格闘家としての自信を取り戻すため、打撃だけの試合に臨み、勝つこと。キックボクシングならそれができると考えたのではなかろうか。
膝カックンだが、復帰前にワンクッション置くならこれもアリ、と考えたとしても不思議ではない。
そして対戦相手だが、YA-MANは人気上昇中の若手で華もある。何より試合は打ち合い上等スタイル。
対戦となれば、賛否はあれど盛り上がるのは間違いない。
朝倉は格闘家としては誰よりも視座の高い選手だと思う。
よく言っているように、格闘技を盛り上げたい、というのが戦う最も大きな理由なのだと思う。
それが彼の一番の美徳であり弱点だった。
つまり、チャンピオンになりたいだとか、誰よりも強くなりたいという自分自身に焦点を当てた欲望(おそらく大半のファイターが持っているエゴ)
が戦うモチベーションに占める割合が低い、もしくは今となっては、ほとんどないのではないか。
それよりは、その試合でより多くの人が楽しめるか、盛り上がるか、といったことが優先順位として高い。
なるほどプロモーターとしては優秀だが、トップを目指す選手としては、資質が決定的に欠けているとも言える。
RIZINに出てすぐの頃は、世間を盛り上げるためにはまず勝つ必要があったから、強くなることにこだわることが目標と手段で一致していたのだろうけど、今となってはその目標もほぼ達成している。
いや、同い年でこれだけ周りのことを考え貢献しよう、期待に応えようとする姿こそが、憧れであり彼を大好きな理由なんだけれど。
まとめると、朝倉が自信のある打撃の闘いであり、かつ盛り上がること間違いない試合だったことが、
オファーを受けた理由だったと考える。結果論だが、焦らずもっと時間をかけて機を伺って、MMAの試合で復帰すべきだった。
もちろんもし勝っていれば復帰の足掛かりになっていたはずで、リスクを取ってリターンを取りにいったということなんだけれど、
ファイターとしてはあまりにもハイリスクな選択だったと言わざるを得ない・・・

なぜ朝倉は負けたのか

正直嫌な予感はしていたが、こればかりは蓋を開けてみないとわからなかった。
ファン、つまり大半の格闘技未経験者の素人の中では朝倉優勢だった。この幻想を抱かせただけでも十分凄いが・・・
しかし結果はほとんど何もできずに、打ち合いで敗れた。
正直まだショックだ。あんな姿は見たくなかったな・・・・
つまるところ、前戦のケラモフも含めて、相手の力量を計り間違えたのではないかと思う。
素人がわかったように語っても滑稽でしかないけれど、そして本人も承知していたと思うけれど、やはり競技が違う。
MMAとキックボクシングは別物だ。今回の試合で見せつけれた格闘技ファンも多いんじゃないだろうか。
朝倉選手のファイトスタイルからしても、テイクダウンの選択肢がないのはかなり厳しい。
加えて、過信があったのも否めない。でなければ、本人の言葉を信じるなら1か月も時間がないなかで決まった別競技のオファーを受けるとは思えない。
別競技とはいえ大半の人はMMAとキックボクシングの違いなどわからない。負ければ同じような競技で戦って弱かったのだと印象を受ける。
彼の積み上げたキャリアもブランドも一瞬で消し飛ぶほどのリスクに見合うものって何なのか?本当はYA-MANを甘く考えず断るべきだった。
せめてMMAで、例えば平本と戦ってあの負け方なら悲しいけれど引退もやむなしと受け入れられたが。
まあ全ては結果論だし、この結果自体、この容赦のなさこそが格闘技の魅力でもあるんだけれど。
でも改めて、この試合に勝者はいるのかな?YA-MANも実は後悔してるんじゃないだろうか。腐すわけじゃないが、MAAファイターにキックボクシングで勝っても強さの証明にはなれど株が上がるわけでなし、一人の偉大な総合格闘家を終わらせてしまったわけで…
しかしそれもこれも含めて、本当に受け入れがたいけれど、ひとつの時代が終わった、ということなんだろう・・・

とにかくお疲れ様でした。
格闘技を好きになったきっかけは間違いなく彼だったし、今後どんな選択をしても応援したい。


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見て、泣きそうになった。頑張りすぎだし、背負いすぎだ。
とりあえず生きて元気になってくれれば十分だ・・・

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