目指すは「邪道の王道バトル」?『プラチナエンド』 1巻感想
読みました。
『デスノート』『バクマン。』に続き3作目ともなるとさすがに原作者の作家性も鮮明に見えてくる(もともと作家性強いけど)。今回も安定の「頭脳戦×勧善懲悪もの」だ。それ自体いいことでも悪いことでもないし、たぶん漫画家本人としてはメリットの方が大きいけれど、これはやり方工夫しないとなかなか厳しいんではとまず思った。
何が言いたいかというと「『デスノート』と読み味が似すぎてるなー」ってこと。新鮮さはほぼないと言っていい。作画も意識的に『バクマン。』より『デスノート』に近づけてるかんじがするし、自覚的にやってるんでしょうね。
設定的には『未来日記』とかなり似てる。自分と同じ力を授かった神様候補の敵たちと頭脳戦&バトルロワイヤルな話。
- 作者: えすのサカエ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2012/09/01
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ありがちといえばありがちだけど、たぶん大場つぐみが最も得意とするところ。
大場&小畑コンビの漫画を初めて読む人にとってはかなり面白いと思う。前作二つを読んでれば「ここデスノートっぽい!」「こういうのバクマン。でみた!」って場面はたくさんあって嬉しい。
ただ、一方で「うーん・・・これでいいのか?」ってかんじも拭えない。つまりファンとして“大場作品あるある”は読んでて楽しいけど、まさか何も新しいことやらないつもりかなと一瞬そんな疑念がよぎる。下手打つと、今作はよくても次回作以降で完全に飽きられる危険をはらんでる。
でも今作は『デスノート』と違って純粋な頭脳戦ではないんだろうなと思わせる設定もいくつかある。
目に見えない速さでどこへでも飛んで行ける「天使の羽」、人を殺せる「白い矢」・虜にする「赤い矢」。
これだけで、たとえば天使の羽があれば世界中どこへでも飛んで行ける=空中戦ができるってことだし、海でも山でも摩天楼でもバトルフィールドは思いのままということ。相手に矢を刺せるか刺されるかの勝負ならアクションシーンも入れられる。
つまり『バクマン。』言ってたような邪道の王道バトルをやろうとしてるのかなと思った。
1巻を読んだ限り目立ったバトルシーン0だけど、今後の展開次第でどんどんそんな場面が出てきそう。もしそうなるなら過去二作とは違った読み味になるはずだ。そしてタイトルにプラチナ“エンド”とあるのをみると、最終的な結末はもう作者の中で決まっていそう。そんなところも『バクマン。』の漫画中漫画「リバーシ」っぽい。
というわけでなんだかんだ期待してるし早く続き読みたい。なんで月刊誌行っちゃったんだろうなー
- 作者: 大場つぐみ,小畑健
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2016/02/04
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【2016年1月】観に行った映画まとめ
先月観に行った映画のまとめ。
「傷物語‐鉄血編」「ブリッジ・オブ・スパイ」「グラスホッパー」「ザ・ウォーク」の4本。
「傷物語 Ⅰ鉄血編」☆☆☆
西尾維新「傷物語」の劇場版3部作の第一作め。
60分という短い時間かつ、ストーリー的な盛り上がりも控えめ。バンパイアハンターと一人も戦わずに終わったことには正直がっくりきた。ゆえに「映画を観た」という満足感にはやや欠けてた印象。だけど、TVアニメとは明らかに異なる絵のタッチにワクワクしたり、細かいアニメーションの技術や映像美は流石シャフトで、最初はどこのアート系の映画かと思うほどだった(アート系映画なんて見たことないけど)。とにかく目を楽しませるという一点では間違いなくレベル高いし、よく考えたらアニメシリーズの方だってストーリーというよりは摩訶不思議な映像美を楽しむ方に重点置いてるわけで、作り方としては正しい。キスショットと暦の邂逅、忍野メメの疾走・助太刀?シーンなど見どころもないわけではないし、次も観に行こうと思うには充分かと。
syuraw.hatenablog.com
「ブリッジ・オブ・スパイ」☆☆☆☆
冷戦中の実話を元にしたサスペンス映画。
前情報ゼロで観に行ったんだけど、観終わった後スピルバーグ監督作と知ってすごい納得した。
世間の冷たい目に耐えながら職務を全うしようとする主人公と祖国への忠義を貫く囚われのスパイの友情。派手なシーンはなく画面は暗く、終始地味な場面が延々と続くのに、飽きずに見せるところがさすが巨匠というかんじ。マーベル映画のような華やかさはないがしかし、これぞヒーロー。
美学のあるやつはかっこいい。
なぜスピルバーグっぽさをかんじたかと後で考えてみたところ、『ターミナル』に非常に近いのだと思い至った。同じくトム・ハンクス主演のヒューマンドラマ。
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「グラスホッパー」☆☆
原作は伊坂幸太郎の小説。
高校生のころ「ラッシュアワー」を読んで以来、なんとなく伊坂幸太郎に苦手意識があって、そろそろ感じ方も変わってるかもと期待したけどやっぱりピンとこず。もちろん原作を読まないとホントのところどうなのかはわからないし、調べたらストーリーの進め方も原作とはだいぶ違っているらしいのだけど。観終わったあと、何とも言い難い気分になった。
物語は主人公含めた3人の人物がそれぞれ自分の思惑をもとに動く群像劇みたいになっている。サスペンス要素が多くてそこは好みなのだけど、一人だけほとんど魔法に近い特殊能力をもってる人物がいたり、唐突に、なんか哲学的な“それっぽい”セリフを言わせようとしてて意味もなく萎えたり、あと全体的に人物がなに考えてるかよくわかんなかったり菜々緒の演技だけ下手すぎて浮いてたりといまいち物語に没頭できなかった。
ただアクションシーンはかなり見ごたえありで、山田京介がならず者のアジトに乗り込んで次々とナイフ刺し殺していくシーンとかはめちゃめちゃかっこよかった。若さゆえの無鉄砲さ、がむしゃらさなんかもよく出せていたし、この映画一番と言っていいくらい好演だったのでは。
- 作者: 伊坂幸太郎
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「ザ・ウォーク」☆☆☆☆☆
1974年、NYのワールドトレードセンターで綱渡りをした男・フィリップ・プティの実話を元にした映画。
3Dということもあり映像は圧巻だった。まじで金玉縮みあがる。そしてこの映画をレンタルして家で観る意味を全く感じない。少しでも興味があれば今すぐ映画館へGOです。
ラピュタじゃないけれど、地に足をつけて生きるってのは人の本能みたいなもので、そこから逸脱したがるってのは間違いなくどこか「狂ってる」んだと思う。でも、そんな狂ったヤツらの話というのはなぜだかこんなにも面白い。地上411メートルの高さで綱渡りをすることを「美しい」と彼は言う。美しさに憑りつかれた人間が死の恐怖さえ凌駕する瞬間の、えもいわれぬ興奮。派手な音楽も刺激的なアクションシーンもない、ただ静寂の中でワイヤーの上を歩む男の姿に心打たれる。ただただ、すごい。
繰り返しますが映画館で3Dを観れるのは今だけなんで、興味があるならぜひ今のうちに。
4年間「テレビのない生活」をして思ったこと
一人暮らしを始めてもうすぐ4年経つけれど、結局テレビを買うことなく終わりそうだ。
情報を薄く広くとる、ということ
断片的な情報ならば、ネットくらいしか情報源がなくても入ってくる。
ただし自ら興味を持って積極的に情報を取りに行く気がないと、かなりぼんやりとしか分からない。分からない部分は勝手に自分で「たぶんこういうもんだろう」と予想してみたりするけれど、大抵はずれる。
たとえば8.6秒バズーカ―が流行ってた時期は、まずネット上でちょいちょい「ラッスンゴレライ」という言葉を見かけるようになる
→「ラッスンゴレライってなんだよ」と頭の隅で疑問に思いつつ特に興味がないのでスルーする
→「ラッスンゴレライ」という言葉を認識した後はやたらとそれが目に付くようになる
→正直気になってきたけど調べたら負けな気がして放置
→やっぱり気になる
→ようつべに動画を観に行く
→結局ラッスンゴレライがなんだったのか分からない
という経緯をたどった。
テキストだけでなく映像があることで、その物事に関する記憶が定着しやすいという事実を再確認した。
もしテレビがあれば、この時期なんとなくテレビを流しているだけでも一度くらいは彼らのネタに遭遇して「こういう芸人なんだな」と理解できるだろう。ちょっとした説明とともに映像を見ていれば、おおざっぱであれど「分かった」という手応えを掴めると思う。お笑い芸人はそれが顕著だが、たとえば世間を騒がせたSTAP細胞やパリの同時多発テロのニュースにしても、情報としてはテキストで吸収したけれど、イマイチ印象が薄い。
小保方さんが動いて何か喋るのをほとんど聞いたことがないし、テロの映像も見ていないので「そういう事件があった」以上の認識にはなりづらい部分がある。
つまり
①もともと興味のない情報は断片的にしか入ってこないので印象が薄い
②結果、知りうる情報にムラができる(興味の差がはっきり出る)
ということになる。
ちなみにこれから就活をする大学生には、就活中だけでいいから、テレビか新聞どちらかを情報収集のツールとすることをおすすめしたい。
ネットに比べこれらのメディアの良いところは、自分が元々興味のない、あるいは薄い情報も他と並列して伝えてくれるということだ。企業で面接官をしているおっさんたちから最近のニュースについてふられたとき、それが興味のない事柄だったからとスルーしていたことだったりするとかなり後悔する。少しでも知っているか知っていないかは、こういうときかなり決定的な差になる。
そういう意味で、テレビほど薄く広く情報をとるのに適したメディアは他にないと感じている。
あまりの“濃さ”にびっくりする
これはバラエティ番組に顕著だが、たまにテレビを見ると、その“味付けの濃さ”に驚く。
ド派手な文字で芸人のボケやツッコミがどどんと画面に表示されたり、企画がやたら人の感情を刺激したり、喜怒哀楽を助長させるものだったり。「どうだ、面白いだろ!?」「悲しいだろ!?」「驚いたろ!?」「かっこいいだろ!?」「綺麗だろ!?」「可愛いだろ!?」・・・・
さっきネットが主な情報源だと情報そのものに対する印象が薄くなると書いたけど、これはその裏返しだろう。テキストであれば、内容はどうあれその刺激の強さにも限度がある。薄味に慣れ親しんでいて、たまに超味付けの濃い、押しつけがましいまでの情報に触れるとびっくりして耐えられなくなる。
特に目につくのは、喜怒哀楽の中でも“怒”の部分、つまり感情を逆なでするような、観ていて思わず腹が立つような企画や映像を確信犯的に流していること。「こういうのムカつくでしょ!?」「腹立つでしょ!?」ってかんじで製作側がこちらの感情を揺さぶってくるのを嫌というほど感じるのだ。それがわかっていながらも、さすがにあちらもプロなので、まんまと腹を立ててテレビの前で文句を言ってしまったりするんだけど、そんな自分に気づいてたまにぞっとする。こんなことで自分の中の何かが擦り減ってしまうのは馬鹿らしい。
今後テレビを買うことがあるかもしれないが、その点意識して、加減して見ないと怖いなと思う。
まとめ
他にも「一定期間のブランクがあることで浦島太郎の気分が味わえる」とか「テレビゲームやスポーツ観戦がしたいとき無性にテレビ買いたくなる」とか「CMってうざくね?」って話とかあるんだけれど、まぁタイトル以上のことは言えそうにないので割愛。
いろいろ考えた結果、テレビはあってもいいしなくてもいい、という結論に達した。どちらでもいいということは、何か強烈な動機が今後起きない限り買うことはないだろう。実際なくてもさほど不満はなかったのだし。
理想的なのは、自分の家にはないけれど、観ようと思えばいつでも観れる状態か。そんな都合のいい女みたいな新しいテレビ鑑賞の形が実現すればいいなと思う。
- 作者: 和田秀樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/03/25
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