Amazonの3.11
Amazonの3.11─電子書籍オリジナル─ (角川書店単行本)
- 作者: 星政明
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2013/03/07
- メディア: Kindle版
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『アマゾン』といえば、今や知らない人がいないほどの世界的なインターネット通販企業。僕も書籍を購入するときによく利用するし、電子書籍はオールKindle。もはやグーグルやアップルと並んで「あって当たり前」なかんじになってる会社です。そんなアマゾン(正確にはアマゾン・ジャパン)は、ちょうど3年前の東日本大震災でどんな役割を果たしたのか。
近年はネットネイティブな世代であろう僕でもびっくりするくらい、社会の情報化が進んでいます。インターネットの分野は特にそれが目覚ましい。「巨大災害の世紀」とも言われる21世紀において、これからの災害対策へのヒント、そしてツイッターなど、インターネットの可能性を思わせる内容になっています。値段も100円と、超お手頃。
ほしい物リストの「本当の使い方」
アマゾン・ジャパンが先の震災で果たした仕事の要となったのが「ほしい物リスト」。ほしいものリストというのは、アマゾンのページで買い物をする際、欲しい商品やあとで買うものをリストアップしておくものです。
日本においては、上記のようにあくまで「個人用に」購入を検討しているものをチェックしておく、いわば備忘録的な使い方が主流です。しかし実はアマゾン発祥の地アメリカでは、「誕生日や出産などのプレゼントに希望する商品を登録しておき、それを見た友人や家族が注文する」という使い方が一般的(最近ではこういう使い方をする人もちょくちょく見かけます)。
つまりこの「ほしい物リスト」は本来、プレゼントをする側とされる側の“ミスマッチ”を防ぐためのサービスといえるのです。この「ミスマッチを防ぎ、需要と供給の誤差をなくして物資支援を効率化する」という機能が、災害発生時において最適なサービスでした。
Amazonはいかにして被災地に物資を届けたのか
震災でアマゾンが行った活動は「被災地(避難所)のほしい物リストをつくって全国から支援を募る」こと、つまり、物資支援のプラットホームを整えることでした。これを被災者が利用するまでには
避難所でアマゾンのアカウントをとる
↓
ほしい物リストを作る
↓
公開
↓
全国の人がそれを見る
↓
見たい人が贈り物として購入
↓
アマゾンが届ける
という流れがあります。
しかしアイデアはいいけれど、これを実現するためにはいくつもの障害がある。例えば、
・震災の影響で商品の配送ができない
ということ、そしてそれが解決しても
・避難所にいる多くの人の中から特定の人にどうやって届ければいいのか
がわからない。さらにこうした支援方法では
・支援者の善意が悪用される危険がある
のです。
そしてこれらを解決したのは全て「人の力」、マンパワーでした。
震災からわずか一か月足らずで避難所までの配送を可能にしたヤマト運輸の社員は、受取人を一人ひとり呼び出して直接荷物を手渡した。アマゾンで被災地支援の指揮を執った鹿妻さんは、避難所と連携してほしいものリストを作成しました。どれも非常にシンプルで、しかし根気のいる地道な作業です。しかもすごいのが、こういった支援は全て、ヤマトにしろアマゾンにしろ、社員の自発的な活動がもとになっていること。大企業に根付いた、共有された意思みたいなものが強固なんでしょうか。さすがです。糸井重里さんはこれを「クロネコヤマトのDNA」と表現しているそうです。
◆
ここまでは具体的な人名はあまり挙げずに書きましたが、こうした活動は「アマゾン」という大ざっぱなくくりで行われたものではなく、ひとりの社員が自分から頭をひねって、必要な人とコンタクトをとり、連携して積み上げた結果として成し遂げたものです。
またこの「ほしい物リスト」の支援は、ツイッターのつぶやき、そしてリツイート(他の人のつぶやきを自分のタイムラインに表示して広めること)で拡散され、認知されていったことです。当たり前ですが、20年前の阪神淡路大震災ではこういう情報伝達の手段はなかった。
被災地支援のことで思い出すのが、赤十字をはじめとした募金活動。僕も何度か募金してみたんですが、それが結局どうやって使われたのか、ちゃんと届いたのか、はっきりしないなと思ってました。実際、集まった募金の使い方については「平等に配布しないといけない」といった考えからか、被災者に届くのが遅れるなんてことも起こっていたようです。今その時必要とされてるお金なのに結局届かないんじゃ意味がない。
その点、アマゾンのほしい物リストを使った支援は必要なものを必要なだけ(数量も指定できる)、速く的確に避難所に届く。送った本人も、届いたかどうかを確認できる。
グローバル企業で誰もが知っていて、全国に手が届く巨大流通企業だからできたことです。
こうしてインターネットによる被災地支援のモデルができたこと、どういったものが必要とされていたかなどのデータが蓄積されたことも、先の震災で得た大きな収穫ではないでしょうか。
Amazonやtwitter、あとはブログもそうだけど、匿名でもいいからネット上に「自分だけのプラットフォーム」があると、いざという時役立ちそう。
— ゆーすと (@ust411) 2014, 3月 11
今までは災害時には国や地方自治体の対応次第でしたが、アマゾンやヤマト運輸のような民間企業、インターネットを利用する一般人の力が果たす役割は、たぶんより大きくなっていくんだろうなと思います。
もしまた大きな災害が起こったときはこの経験が活かされるんだなぁと思うと、心強いですね。
- 作者: 糸井重里&ほぼ日刊イトイ新聞
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/12/16
- メディア: 単行本
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