あなたに【心のふるさと】はあるか 二村ヒトシ『すべてはモテるためである』

すべてはモテるためである (文庫ぎんが堂)

すべてはモテるためである (文庫ぎんが堂)

読みましたーめっちゃ面白かったです。
やっぱ皆が「面白い」と言ってるものは面白いんだな、という当たり前のことを再確認しました。


男にとって「モテる・モテない」というのは人生の大問題です。思春期に自分を「男」と認識したその時からずーっと頭のどこかにこびり付いて離れない。もはや呪い。どの程度の問題かというのも、必ずしもそれは性欲の多寡で決まるものでもない。なぜならその気持ちは、著者の言葉を借りるなら「他人から『あなたはそんなにキモチワルくないよ』って保証してほしい」っていう欲求が根底にあるから。ただ、ここに書かれてることを読む限り、モテるのは、「保証なんてなくてもヘーキそうな」人なんですよね。じゃあどうすればいいのか、というのがこの本のテーマなんですが、一言でいえば「自分を知ること」だそうです。


僕が見ててモテる人って、まぁ色んな「モテ」があると思うんですが、やっぱり一番多いのは自分に自信があるタイプ。彼女いるいないの問題でもなくて、その自信を表に出す出さないの問題でもなくて、なんかこう内側から滲み出てくるオーラというか、芯がブレない安定感がある。一見軽そうで、そんなにものを深く考えてなさそう(に見える)人でも、ヤジロベーみたいに、立ってる位置は揺らいでないかんじ。

その自信は、あるいは自信に見えるものはどこから来るのかなーと僕も考えたりするんですけど、個人的な結論として僕は、自信は「自分の欲求を(実際に)実現した経験の多さ」で決まるんじゃないかと考えてました。欲求に正直になって、表に出すことがまずひとつ、次にそれを実現するために色々考えるっていう過程と結果を経ていること。
この本にも「自信はどこからくるか」について、ちゃんと書いてあります。モテる人は【心のふるさと】=【居場所】がある、と。

「なにが好きかを自分でわかってるか」ということは、おおげさに言うと「あなたには、ちゃんと自分で選んだ【自分の居場所】があるか」ってことです。

そこに帰れば、とりあえず臆病にならずにすむ、ふるさとです。それがあるってことは【しっかりと自分を持っている】ってことです。

この【心のふるさと】は、たとえば趣味だったり仕事だったりするんですが、要するに自分が好きなものをしっかりわかってて、それに「ハマっている」状態、「自分には心の拠り所があるんだから、大丈夫」という自信がある、何かの“オタク”になってる状態が、モテの第一歩。「自分はなにが好きかわかってる」ことが「自分を知っている」ことであり、それが異性との対話においても大事なんだ、と。

全てにおいてそうである必要はないけれど、やっぱり要所要所の大事な場面では自分で考えた結果の決断をしてないと、いつのまにか【ふるさと】のない状態になっちゃうんだろうなーと思う。


あとは、巻末の國分功一郎さんとの対談も面白かった。「非モテ」や「非リア」って言葉を使うことが「実はモテたい・・・」という気持ちをストップさせ、感情を停止させてしまい、自分の中の「モテない」という恨みを熟成させる装置になっている、という話。ここで言われてるのが「感情は、考えないで感じきれ」という言葉。

感情というのは、感じている途中で「相手が悪い、自分が正しい、自分が悪い」などと頭で判断し始めるとしんどいことになるので、すなおに「怒り」とか「さみしさ」を感じきったほうがいい、という提案なんです。

自分が何が好きか、というのも、結局は自分の感情を「考えないで、感じき」ってはじめて分かることですよね。


他にも「スーパー戦隊」の話とか面白かったんですけど、まぁこのへんで。「男向けの恋愛指南本」って体ですがモテる・モテないとかもはや関係ない人生指南的なテーマも多分にあるかと思いますんで年齢性別問わずおすすめです。

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