映画レビュー『Mr.Children REFLECTION』

【劇場パンフレット】 Mr.Children REFLECTION 桜井和寿 田原健一 中川敬輔 鈴木英哉 【Mr.Children REFLECTION写真付き】

ミスチルのライブフィルム「REFLECTION」を観てきた。結論から言って、素晴らしい出来だった。
素晴らしいと言ってももちろん「映画」としてではなく「新アルバムのプロモーション」としてなんだけど、こんなの観るのミスチルファン以外いないだろうし、ほとんどの人は僕と同じく「新アルバム、どんな出来かな?」という、未発表曲目当ての鑑賞だったと思う。

つまりこの映画の良し悪しを決めるのは、これまでのミスチルの曲と比べて「未発表曲が良さそうか、そうでもなさそうか」という点に尽きる。結果的に良い意味で裏切られて、気付いたら2回も観ることになってしまった。正直ここまで良いとは思ってなかった。

セットリスト

1.Everything(It's you)

最初の3曲では一番良かったと思う。どうせ何度も聴いた曲だし、と舐めてかかってたら嬉しい誤算。一曲目だからか、他のとは若干撮り方が違うかも。わからんけど。音楽の才能はからっきしな僕だけど、生まれて初めて「ギター演奏してみたい!」と思った。

2.旅人

ライブでほとんどやらない曲なのでファンの熱気がやばい。たしかにYoutubeの動画とか見てても、演奏してるの見たことないかも。この曲で一気にアクセル全開。

3.名もなき詩

いい加減聴き飽きた感というか、「もういいよ」という気はちょっとする。とはいえ、抜群の安定感。ライブだとけっこうアレンジが入ったりもするけど、今回はCD音源にかなり忠実だったような。

4.Melody

ミスチルお得意の明るいポップソングでありながら、どこか懐かしい感じもあり、新しさもある。個人的にはけっこう好き。もう発表済みの曲だけど、(全部聴き終えた後で)改めて新曲全体の中での位置づけを考えると、わりと異色を放ってる気がする。女性受け良さそう。


5.fight club

これがほんとの意味で「新曲」一発目。めっちゃくちゃよかった。仮タイトル「疾走POP」のとおりアップテンポな曲で、ギターをジャギジャギ弾き鳴らすかんじとかシャウト気味の歌声とかサビの裏声とか。かなり好みの曲。聴いてると、ボクサーが相手のパンチをよけながら素早くジャブを放ってる絵が浮かんでくる。

歌詞とタイトルはブラッド・ピットの映画から。20歳の若者が自分の情熱を持て余してて、他の誰かを敵に見立てて戦う姿勢をとることでなんとかやりすごす、というストーリー。

6.斜陽

FNS歌謡祭でお披露目済み。かなり「ミスチルっぽくない」曲で、夕日に染まる西部の荒野を馬で駆けるようなイメージが浮かぶ。桜井さん曰く「ロシア民謡がモデル」らしいけどそもそもロシア民謡を僕は聴いたことがない気がして、そういう人はまず間違いなくウエスタンな印象を受けると思う。曲を通して浮き沈みがなく、ちょっと聴いただけではどこがサビかわからないかも。Melodyとは反対に女性受けが悪そうなかんじだが僕はこっちの方が好きで、ひとつ前のfight clubからの流れで聴くと、かなり腕のいいリリーフピッチャーのような曲に思える。間違っても前面に出て場を盛り上げるようなキャッチーな曲ではないが、良い位置につけばアルバム全体の雰囲気を上手く補完し整えてくれそう。タイトルは太宰治の小説から。

7.蜘蛛の糸

斜陽に対してこっちは芥川の同名小説から。ねっとりと大人っぽいバラードだけど、わりと短めの曲だからかくどい感じはしない。「指で触れるよ」「引き寄せるよ」など語尾が官能的で引き込まれる。雰囲気としては「蒼」とか「ハル」に近い。この両曲は僕はあまり好きじゃないんだけど、蜘蛛の糸は悪くないなぁと思った。

8.I Can Make It

「Can Make It~♪」って歌詞と曲調が印象的で、見終えた今もメロディが思い出せる唯一の曲。歌詞ははっきり聴き取れなかったけど、「光の射す方へ」「雨のち晴れ」的な、仕事に励む男をモデルにしてる気がした。雰囲気は「Hevenly kiss」からバラードっぽさを取っ払ってロックサウンドにしたかんじ?かなり好きだし、聴きこめば聴き込むほど病み付きになりそう。
*3/7追記
サビの歌詞「プレッシャーを前に引っ込めるアイディア」「日の目を見ないままのこの願い」などから、アーティストや作家のようなクリエイティブ職の人が主人公みたいだ。「足音~Be Strong」を作る際3カ月かかったという桜井さんの経験をそのまま曲にしたのかなと思う。

9.放たれる
ここで知ってる曲が来て、新曲が一気に押し寄せてカオスな脳内を一旦リセット。テレビで歌ってる時のような優しいかんじがここでは薄れて、ギターとかドラムがよく聴こえた。曲としては特に好きでも嫌いでもないけど、これがもし完全な未発表曲としてここで聴いていたらと考えるとちょっと分からない。ただ、ゆったりとしてて歌詞は聴き取りやすい反面、7分はやっぱり長い。

10.花-Memento-Mori-
なぜか桜井さんがひとりアコギで披露。ちょっと休憩ってことかと思ったけど、「この曲をやりたくなったんですよ」って言葉を聞いて、そういえばこの映画で度々挟んでくる、街の雑踏とかそこを歩くミスチルメンバーの映像を思い出して「ため息色した通いなれた道 人混みの中へ吸い込まれていく」って歌詞と何かリンクしてる気がした。

11.進化論

しっとりしたイントロで「あ、バラードっぽいのかな」と思ったら、絶妙に重厚な音が背景に聴こえてきて、全体としては力強くも切ないような、かなり新鮮な印象。CDで聴くのが一番楽しみな曲かも知れない。アルバム「シフクノオト」でいう「PADDLE」的なポジションかも?かなり好き。
https://www.youtube.com/watch?v=poDb8jjJtU0
YouTube



12.足音~Be strong

足音 ~Be Strong

足音 ~Be Strong

この曲単体で聴くとそんなに好きじゃないかなと思ってたけど、やっぱりライブハウスでがっつり演奏されると全然違う。バンドとしての思い入れもかなりありそうで、演奏途中でスローモーションが入ったりとかなり凝ってる。「進化論」や、後に演奏される「幻聴」「未完」なんかと合わせて聴くと、これが新アルバムの核になってる理由がよくわかる。

13.幻聴

次のアルバムのリードナンバーらしい。ポジティブで明るい曲なのにどこか切ない、透き通った曲調が印象的。サビへの溜めの部分、「夢から夢へと橋をかけて渡る~」の先の盛り上がりを感じさせるとこが好き。歌詞がミスチルとファンの関係をすごくストレートに語ってて、でも解釈が一編通りにならず誰にでも当てはまるくらい透明感があって、流石、こういう作詞は上手いよなぁって改めて思った。「足音」よりリラックスしてる分、よっぽど新アルバムのメッセージを上手に表現してるように感じる。


説明するのも野暮だけど

「宝島」「華やかな場所」=お金、打算、音楽の売り上げ、人気
「微笑み」「僕を呼ぶ声」=ファンの応援

ってかんじなんかな。
同じ内容で、こんなに爽やかな曲にも「退屈なヒットチャートにドロップキック!」みたいな尖った曲にも変わる不思議。

14.口笛

ファン投票1位の曲らしい。なるほどねってかんじ。

ちなみにファンの人気ランキング3位は「旅人」。パンフレットに載ってたランキングを見たら、10位以内に「one two three」とか「UFO」とか、それはもうマニアックな曲が並んでて流石ファンクラブだなと思った。

僕なら何に入れたかなーと考えると・・・「Another Story」「未来」「End of the day」「天頂バス」あたり。一曲となるとけっこう難しい。どれも100位圏外だった。

15.未完

めちゃくちゃかっこいい。「斜陽」と並んで、ミスチルっぽくなさは群を抜いてる。でも「斜陽」より存在感があって、バリッバリのロックサウンドだ。

ミスチルと言うバンドは今もこれからも未完成で、それゆえにさらに進化し続ける、という思いを込めたとか。ファンとしては嬉しい限り。これでへっぽこぴーな曲だったら激しく幻滅してるとこだが「自由自由自由!」って絶叫する桜井さん見てそんな心配はいらなかったなと思った。かなり好き。
*3/7追記
印象的だったフレーズ「心の中の約束の場所へ」。ミスチルというバンドはいつまでも完成しない、未完成でありたいと言ってるけど、それだけだとよりよい音楽を作っていこうとする努力すら要らないことになる。目指すべき完成形はあくまで「概念」として、心象風景として自分たちの心の中にある、ってことなんだろうか。


16.独り言

独り言。

新アルバムについて

映画を観た限り、少なくともここ数年のアルバムではダントツで期待値が高い。何と言っても「ピンとこない曲がない」というのが僕は初めてで、ライブ補正が入ってるとしても「fight club」「I can make it」「幻聴」「進化論」「未完」だけで満足すぎるし、「斜陽」も「蜘蛛の糸」も「Melody」も好きだし・・・ってかんじで滑りようがない。しかもこれに加えて2年前リリースした「REM」も入るはず。「足音」や「放たれる」を含めると11曲で、これにおそらく「fantasy」、あとは「Rolling rolling」とかいう曲が加わる。これら計13曲が新アルバムの全貌っぽい。もしかするとここに「REFLECTION」と名のつく曲が加わる可能性はある。

fight club /I can make it /Melody /幻聴 /斜陽 /進化論 /未完 /REM /放たれる/足音~Be Strong /fantasy /Rolling rolling~一見は百聞にしかず

なんというか、かなりやりたい放題やってる印象だ。この中で一番古い「REM」を出した時、桜井さんは次のアルバムの方向性がなんとなく決まったと言ってたけれど、たぶんその通りなんだろう。fight clubも斜陽も未完も、REMとの相性ばっちりだ。

Mr.Children「REM」Music Video - YouTube

というわけで、6月のアルバムリリースが待ち遠しい限り。


Mr.Children/Split The Difference [DVD]

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