映画『スノーピアサー』

『スノーピアサー』を観てきました。

あらすじ: 地球温暖化を防ぐべく世界中で散布された薬品CW-7により、氷河期が引き起こされてしまった2031年の地球。生き残ったわずかな人類は1台の列車に乗り込み、深い雪に覆われた極寒の大地を行くあてもなく移動していた。車両前方で一部の富裕層が環境変化以前と変わらぬ優雅な暮らしを送る一方、後方に押し込められて奴隷のような扱いを受ける人々の怒りは爆発寸前に。そんな中、カーティスという男が立ち上がり、仲間と共に富裕層から列車を奪おうと反乱を起こす。
解説・あらすじ - スノーピアサー - 作品 - Yahoo!映画



凍った地球を永遠と走り続ける一台の列車で繰り広げられる格差社会階級闘争。よく練られた、見ごたえのある映画でした。(8/10点)


これを読んで観に行く人がいるかもしれないので初めに言っておくと、この映画はたびたび残酷なシーンが出てきます。列車内で繰り広げられるガチな革命を描いるので、人がいっぱい死にます。話としては比喩に富んでるし、ストーリーや構成も見事だったんですが、無理な人は無理だろうなと思います。僕はどうだったかというと、まぁずっと内股で観てましたね。実際苦手ですからねこういうの。わりと冒頭でおっさんがいきなり腕をハンマーで砕かれて「ひょえっ」ってなりました。


映画のタイトルにもなっている「スノーピアサー」は直訳で「雪のせん孔機」でしょうか。人工的に引き起こされた氷河期で、雪と氷を砕きながら永遠と地球を走り続ける列車です。生き残ったわずかな人類がそこに乗り込んでるわけですが、その列車の後方が最も貧しい人々が住み、前の車両は富裕層が支配している。列車の車両ごとに区切られた「格差社会」の縮図を乗せて走る。虐げられた人々は不満を募らせ立ち上がり、反乱を起こします。


ここで重要なのは、一見その反乱は貧民たちが怒りに燃えて自ら立ち上がって闘っているようにみえて、実はそれすらも支配者の掌で弄ばれているだけだということ。つまり

①一部の上層階級が裕福な暮らしをするために後方車両の人々を奴隷のように扱い、富を独占する

②下層民の怒りが爆発し反乱を起こす

③大勢の人々が死ぬ
列車内の人口が減ることで資源(水や食べ物)の消費が抑えられ、人類の持続可能な生態系が保たれる

反乱と革命さえも、列車内人口の過剰増加を抑えるために上層階級によって意図された「口減らし」。これは人口が70億を突破し資源不足が心配される人類の「現在」と重なるし、あるいは「そう遠くない未来の予言」のようで、恐ろしくもあります。戦争はいやだなー。

また上のチャート図の②はこうした口減らしの他に「怒りのガス抜き」の意味もあるでしょう。もちろんいつどのように下層民によって計画・実行されるかは定かじゃないが、支配層にとって反乱が起こること自体は予想の範囲内。似たようなことが散見される今の国際社会を強烈に皮肉ったものでしょう。


ちょっとうろ覚えなんですが、列車支配層の頂点であるウィルフィードは「各々が各々の場所で、各々の役割を果たして列車は動いているのだ」と言います。格差の拡大と階級の固定化、貧しいものはずっと貧しく、富裕層はずっとその富を独占し続ける。この言葉は、そういった人類社会の構造を暗喩する。


ここまで書いてみて、国際政治や世界史、現代史に興味のある社会派な人には結構おすすめなのかなぁと思いました。「ひょえっ」が我慢できる方はぜひどーぞ。

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