映画「青天の霹靂」
超よかった。感動しましたー。
かなり重いテーマなのに、さすが本業芸人だけあって涙と笑いを絶妙に織り交ぜて形にしてるなぁと思った。またそれらと同じくらい熱量も感じて、もののけ姫のキャッチコピーじゃないけど「生きろ。」と言われてるような、そんな映画だった。
この映画を観ながら思い出していたのが、ドラえもんのコミック2巻に収録されている「ぼくの生まれた日」という話。
現代8月7日。この日は野比のび太の誕生日である。のび太は母親の玉子に「勉強しろ勉強しろ」と言われてばかり。
そのため、のび太は「この家のほんとの子じゃないんだ」と言い出す。「じゃあ、たしかめに行こう」とドラえもんは言う。ドラえもんとのび太はタイムマシンでのび太の誕生日、10年前の8月7日へ行くことになった。
ぼくの生まれた日 - Wikipedia
自分は本当に望まれて生まれた子供なのか?どこかで拾われてきただけなんじゃないかという疑問を抱いたのび太は、ドラえもんと共に「ぼくが生まれた日」にタイムスリップする。そこでのび太は、パパとママが自分の誕生の日をどんなふうに迎えたのかを知る。二人は「のび太」という名前の由来や、将来こんな子に育ってほしい、あんな子に育つかもしれないといった話に花を咲かせる。のび太はそれにただ聴き入っている。
誰でも一度は子供のころ考えたことじゃないかなぁと思う。まぁ拾われたんじゃないかとはさすがに思わなったけど、僕なんかは子供のころ、親にひどく叱られた日には家から閉め出されたりしてました。そのころってまだ大人側の「裁量」みたいなのを推し量りきれなくて、どこまで本気なんだろう、もしかしてこのままずっと家に入れてもらえないのか?俺なんかもうどうでもいいのかな?って思いながら、怒りとたまらない不安とでビービ―泣いてましたね。なつかし。
「青天の霹靂」はこの話の「のび太」が「売れないマジシャン」になった話と考えていいと思う。こういう疑問を抱えたまま大人になる人もいる。「自分は望まれて生まれてきた」「生まれてきていい存在なのだ」という「生」の根本を揺るがすようなものが欠けて、それを引きずったまま大人になるということ。
自分の存在を自分自身で肯定できて、他人の評価は気にせず生きられる人がいるならその人は強い。しかしそういう人も元をたどれば、一番最初は親や親に近い関係の人に自分を肯定されることから始まるんだと思う。生まれた瞬間から唯一無二の素晴らしい存在であれたら人間はどんなにか生きやすいかと思うが、実際はそうではない。犬や猫といった動物ならそんなこと気にもかけず生きられるのに、理性をもった人間だけに与えられた因果ですよね。それは時に尊さを生むけれど、反面すごく残酷でもある。
この映画の主題歌になっている、Mr.Childrenの「放たれる」の歌詞にこんな一節がある。
生まれてきた ただそれだけで
愛されてる証
たしかに今こうして元気に生きているということ自体が、母親のお腹で十月十日かけてゆっくり大きくなり、最後には大変な苦痛を伴うお産を経て生まれてきたということにほとんど疑いの余地はないんですよね。男にはたぶん一生分からないような大変さに耐えて産まれてきたのには、やっぱり「生まれて欲しい」っていう誰かの思いがあって、それは街で見かける何十、何百人という人誰もが誰かのそういう思いを貰って生きている。
でももちろん、中にはそうじゃない人もいて。
たまにニュースで、女子中学生か高校生がトイレで赤ちゃんを産んでそのまま放置して、赤ちゃんは死んでしまったみたいなのあるじゃないですか。そういうの聞くと、やっぱり中には望まれないで生まれる人もいるのかもと思う。もしくは本来望む側の人に望むだけの余裕がなかったみたいな、悲しいことも中にはあるんでしょう。そういうの考えると「ただそれだけで愛されてる証」ってのは、響きはいいが虚しい。でもわかっていてあえて言い切ったのかな、という気もする。生まれてきたことが愛を受けた証なら、生きていることそのものが生きる理由になるんだ、とあえて言い切る。それを根拠なしに信じるのも強さかもなと。
少し前の記事で自殺という重い問題に触れたけれど、そのへんのことも意識せざるをえなかった。
それにのび太にはドラえもんが、ペペ(売れないマジシャン)には「青天の霹靂」があったけれど、この映画や小説を読んでる人にそんなラッキーはまず起こらない。だから結局、本気で悩んでる人には虚しいだけの話かもという部分はあるんだけれど。
そんな感想でした。見て損はない映画だと思います。
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