ブックオフでなんとなく買ってみた「漫画バイブル(2)構図破り」がなかなか面白い。
- 作者: 田中道信,えんぴつ倶楽部
- 出版社/メーカー: マール社
- 発売日: 2004/04
- メディア: 単行本
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というわけで、知ったかぶり交えつつ紹介します。
①三角形~高さや奥行きを表現する
三角形は一番簡単で使いやすい構図法。
二等辺三角形の頂点に主役や脇役を配置すると高さや奥行きを表現したり、まとまりを出したいときに非常に効果的。しかしそのぶん面白みに欠けてしまうことがある。進撃の巨人の表紙に使われている構図法としてはおそらく最頻出。
5巻の表紙は、左上の巨人を頂点としてリヴァイ兵長とエレンを結ぶ三角形の構図。頂点をやや左にずらし、三辺の長さを変えて変化をつけてるようです。
ちなみに進撃の巨人2巻に表紙のボツ案(ミカサが中央に立って剣を上に掲げている)が載っていて、それは綺麗な二等辺三角形の構図になってますね。
②逆三角形~不安定感や動きを出す
女型の巨人、エレン(巨人)、ミカサの三点を結んだ逆三角形の構図。
三角形とは対照的に不安定感を出して動きを表現する構図法。
この逆三角形も三角形と同じく三辺の長さが等しいと動きが乏しくなってしまうので、不等辺三角形で配置すると変化をつけられ、また辺の長さが違うほどダイナミックな動きを表現できるとのこと。
『十字架のキリスト』ジョバンニ・ベッリーニ
③トンネル型~主役に視線を導く
トンネルや窓などを通してのぞき見る感覚で画面奥へと視線を導く構図法。トンネルや窓を通して自然と主役へ視線を導くことができます。
9巻表紙では猿の巨人が背後に腕を広げて立ち、その内にいるエレンとミカサに視線を誘導する。巨人・エレン・ミカサの三点で三角形を作っているので、やや複合技っぽいかんじもします。
ちなみに、手前に大きく主役を配置して奥に舞台背景をみせる「逆トンネル型」という構図法もある。近いのだと進撃の巨人(6)とか進撃の巨人(13)の表紙かな。
④対比~個性を強調する
対比の構図には、ひとつは左右(上下)に二つの対等の個性のものを配置するシンメトリータイプの構図法と、極端に違う二つの個性を並べて対比を強調する構図法があります。主役と脇役を見比べることにより、それぞれの個性がより強調されて相乗効果を出すことができるとのこと。
上の11巻は対等な個性だけど、下の12巻は極端に異なる個性を並べるタイプ。
『アルノルフィーニ夫妻の肖像』ヤン・ファン・アイク
黄金分割/ダイナミックシンメトリ―
縦横の比を1:1.1615で分割する線上に主役と脇役を配置するとバランスが整い、自然と目に入る構成になるということが絵画の統計学上明らかになっている。これが「黄金分割」と呼ばれる構図法。
これに似たものとして「ダイナミックシンメトリ―」というのがあります。横3:縦2の比率の画面上に対角線を引き、さらに4つの頂点から対角線に対し垂直に交わる線を引く。この交点をそれぞれABCDととし、主役と脇役を配置する。
たとえば主役をBに置くとすると、脇役は対角線上のCに置くと、自然と目に入ってきて両方を引き立たせることができます。
7巻は巨人エレンと女型の巨人がちょうど上の図でいうB、C点に配置されてます。またそれだけでなく、周りを立体起動で飛び回る調査兵団を上手く配置して三角形(あるいは逆三角形)との複合技っぽくもしてる。
一番初めに紹介した4巻ですが、これは構図的には、ぱっとみたかんじ単純な二等辺三角形。三角形の弱点はまとまりがよくなる代わりに面白みがなくなること。でもこの絵はエレンとミカサの位置関係が7巻と同じダイナミックシンメトリーになってるようにも見える(上の図で言えばAとDですね)。やっぱり三角形の構図法を使うときは、基本的に他との合わせ技でないと(よっぽど絵が上手いとかじゃない限り)難しいのかなって思います。
『落ち穂拾い』ミレー
他にも「この表紙はこれかな?」みたいなのはあったけど、あえて分かりやすそうなのだけ選んでみました。
「S字型」や「円形」など、漫画バイブル〈2〉構図破り編には載ってるけれど今のところ進撃の巨人では使われていない(これから使われるかもしれない)構図法もあります。ただどうやら現在出ている14巻まで使われていない手法にはそれなりに理由がありそうで、たとえば「S字型」は美しさや柔らかさを表現する構図法。進撃の表紙でそれは世界観壊しかねないし、あまり必要ない要素でしょう。
以上、簡単なのをいくつか覚えとくだけで絵を見るのが楽しくなりそうだし、おすすめです。
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2014/09/05
- メディア: 雑誌
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