- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/06/22
- メディア: 文庫
- 購入: 7人 クリック: 203回
- この商品を含むブログ (88件) を見る
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2012/10/17
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
読みました。
古典部シリーズその5。マラソン大会当日、奉太郎は新入生が古典部への入部を突然とりやめ去っていった理由を推理する。
個人的にシリーズで一番好きなのは『クドリャフカの順番』なんですけど、これはその次くらいに好きかもしれない。読んだあと胸の奥になんともいえないモヤっとしたしこりが残るのがよいかんじです。
◆
今回テーマになってるのはタイトル通り「ふたりの距離」。マラソン大会を走る中で、物理的な距離と心理的な距離感、両方の意味を含んでいるよう。また古典部員+大日向のそれぞれの距離感みたいなものも描かれていて面白い。奉太郎と摩耶花であれば、奉太郎はあまり他人と積極的に関わるほうではなくて、それを摩耶花は「失礼なやつ」「折木は人のことを見ないもんね」とバッサリ切る。そんなちょっとお互いけん制し合っているような微妙な距離感が、マラソン大会中の並走シーンにも表れてる。
まぁでも、人との距離感の取り方ってほんと難しい。人間関係の悩みの大部分がこの辺なんじゃないかなとすら思う。そもそも「人によって他人との距離感は異なる」という大前提さえ皆の共通認識になってるとは思えないし、分かってるつもりでも時々忘れてしまって、失敗したりする。初対面時の人との距離感、そこからの距離の詰め方。仲のいい友達とかは、大体そのあたりの感性が似通ってる人が多そうだ。
ちなみに僕はけっこう、まだよく知らない相手と関わるときは慎重に見極めたいなと思ってしまうタチだ。だからかわからないが、学校や会社でよくあるのアイスブレイク的なイベント、新歓とか飲み会とか、は、ちょっと苦手なんですよね。「仲良くなろうよ!」「心を開こうよ!」っていう雰囲気に「えっ」って感じて身構えてしまう。そこでガンガン周りと仲良くなれる人とはそもそも発想が違うみたいなんですよね。たぶん僕の考える友達作りって「一本釣り」で、この人は気が合うかなとか、信頼できそうかなってのを観察して、よさそうなら近づいてみる。対して僕から見て“社交的”な人って釣りってより「漁」に近い。とりあえずがばーっと網で大量に捕獲しておいて、その中で本当に気が合いそうな人だけ残っていけばいいじゃん的な発想。
それぞれメリットデメリットあると思うんだけれど、ひとつ言えるのは、「漁」をする際は他人との距離感がそれぞれ違うとか、そんなこと考えてたら何も進まないということ。だからみんな巻き込む。巻き込みたい人・巻き込まれたい人は嬉々として飛び込むけれど、僕みたいな一本釣り派はそこで「うっ」ってなる。でも理想を言えば、自分がどっち派かなんてのはひとまず置いといて、その場その場に合わせた態度で臨むのが一番いいんですよね。そんな器用さが欲しい。
◆
古典部の話に戻すと、たしか奉太郎は前巻でえるたその雛姿を見て心を射抜かれてしまったはず。今後どうなるのか。そもそもこの古典部シリーズ自体が、奉太郎の「省エネ主義」からの転換の過程を描くものなんじゃないかって思ってます。最初の『氷菓』で奉太郎の省エネ主義をある一面では肯定し、そのあといろいろあって、『遠まわりする雛』でいよいよ転換を強いられる。恋愛するってなるとこれはもう否応なしに「ふたりの距離」を縮めざるを得ないし、それは省エネ主義の対極にある。
時期にもよるけど、千反田はちょっと気持ちが沈んでしまってるだろうし、次巻はそこからの回復をテーマにするのかな。なんにしても早く新刊出してほしいなと思う。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2012/10/01
- メディア: Kindle版
- 購入: 2人 クリック: 7回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2012/10/01
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (5件) を見る