人とビジネスの「プラットホーム」 勝間和代『有名人になるということ』

読みました。けっこー面白かったです。*1
本書はタイトルのとおり、「有名人」について書かれたもので、内容は大きく分けて二つ。①有名人から見た世界(世の中)②有名人になる方法

「有名人」はプラットホーム

①では、有名人になる前と後での生活、世間からの視線、仕事、付き合う人の変化について書かれてます。普段「こちら側」でしか有名人を見ることのない僕らと、「あちら側」に行った著者の見え方はずいぶん異なるけれど、具体的には何がどう変わるのか、詳しく解説してくれてます。

超有名な人たちがアルコールに溺れたり、整形に走ったり、ドラッグに手を出したりすることがあるのは、こうした過度の緊張感に耐えきれずのことではないかと推測してます

これは有名人のデメリット「衆人環境の中で生きること」の一例として挙げていたこと。逆にメリットですが、僕らが真っ先に思いつく「金銭的なメリット」も、プライバシーの侵害に見合うか見合わないか程度らしく、思ったほどではない模様。それよりは、有名になることで手に入る人脈とチャンス、発言力の増大の方が大きいらしい。

有名になること、認知されることで得られる信用力をバックに「あの人に会いたい」「話してみたい」という願いが叶いやすくなる。結局のところ、有名になることのポイントは(良くも悪くも)「人を集める」ということに尽きるのかなと思いました。

なぜ世の中に有名人が存在するのか、といったら、それは有名人が存在することが、メディアやそれを活用する周囲にとってもビジネスになるからです

そういう意味では、「有名人である」ということは、いろいろな人がその有名人ビジネスを通じて自分の目標やビジョンを達成するための「プラットホームである」と位置付けるとわかりやすいかと思います。

有名人になる方法

勝間さんが特殊なのは、仕事の失敗を機に新しいビジネスとして「有名人になること」に着目し、そうなるための方法を模索し、結果として有名になったということ。意図して有名になるという点ならアイドルや俳優なんかも含まれるでしょうが、しかし彼らの場合注力するのは仕事として行う歌や演技であって、「有名になること」自体は事務所なりプロデューサーの力が大きそうです。勝間さん自身はもちろん所属する事務所もプロデューサーもついておらず全て自分で行っていた上、「有名になること」自体を目標としていた節があって、そこはやっぱり他の有名人と違う点な気がします。

具体的な方法・戦略として勝間さんは5つのステップを挙げています。

①自分の商品性を把握し、顧客やパートナー、競争相手を特定する
②自分がターゲットとする市場について、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングを行う
③自分を売り込むためのサービスを開発し、そのサービスの提供プロセスを管理する
④自分がつくったサービスを普及させるために適切なチャンネルを見つける
⑤自分のサービスに適切な価格をつけ、品質を保証する

くわしくは読んでもらえればわかるんですが、かなりビジネス的なアプローチです。というか、狙ってやろうと思えばやっぱり、自分を「商品」として、市場にどう認知させようかという話になってくるのかなと。またその基本思想として、「確率の高い方法で何度もチャレンジすれば、いつか成功する」とも言ってます。まぁ、その「何度もチャレンジする」というのが難しいし苦しいんでしょうね。でもここに書いてある方法で実行に移せる力があるなら、ある程度の有名人になれるチャンスは、誰にでも転がってるのかなという気もする。


あと「なるほどなー」って思ったのが「一度有名になってしまえば「有名人」でい続けるか、「元有名人」になるかの二択しかない」ということ。つまり有名人は不可逆で、一度なったら元には戻れないそうです。新しい人は次々出てくるし、なかなか厳しい商売だ。

それでも、有名になって一旗揚げてやるぜ!とか、どーしてもあの人に会いたいんだ!みたいな野心がある人は、一度しかない人生、挑戦してみても面白いかもしれない。

*1:西原理恵子の煽りが秀逸。

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