劣等生、免許を取る。

やっとこさ試験が終わった。いろんな意味で。

何はともあれ今日から夏休みらしいので、いっちょエンジョイしてやろうと思っている。日付変わって8月1日になってるけどやっぱいよいよ「夏だな」ってかんじする。最近は蝉も五月蠅いくらい鳴いていて、指揮者を失ったオーケストラみたいだ。何重奏やねん。


最近のニュースと言えば、自動車免許の卒検にやっとこさ合格したこと。ほんといつまでやってんだよってかんじだが、まぁ正直少し前までは諦めかけていたので、我ながら頑張ったんじゃないかと思っている。

マリオカートをやり込んでたせいで車の運転に支障が出てる - Ust's Diary

これ書いたの11月か・・・


もう少し詳しく書くと、これを書いたあと1か月くらいはちょくちょく教習にも行っていたんだけど、冬休み終わった後くらいから急に面倒臭くなってしまった。もうほぼ免許取れるとこまで来た今なら言い訳にもならないと思うから書くけど、元々免許なんていらないだろと思ってはいた(そんなエントリを以前書いた気もする)。理由はいくつかあるけど、教習に行く前も行ってみて実際に乗ってみた感想としても、自分はたぶん嬉々として車運転することはないだろうなと感じていたからだ。これが若者の車離れか。


とりあえず、自分が車を買ったり所持したりすることは今後10年、少なくとも5年はありえないだろう。「就職したら車に乗らなきゃいけない」ってのもよく聞くけれど、そんなことないだろうと思っている。大阪や東京みたいな都会に住むならむしろ電車なんかの交通機関を使った方が便利だし、車なんか持ってても邪魔なだけだ。

「免許くらい持ってないと就職する時困る」というのはどうだろう。たしかに履歴書の資格欄に何も書けなくなるのは少々さびしいし、免許必須な会社なら雇ってはくれないと思う。でもそれなら、そこに就職しなきゃいいだけの話なのだ。他にいくらでも、免許要らずな職場はあるんだから。それに下手に免許を持っていて、数年か数か月乗っていない状態のペーパーの自分がいざ誰かに「運転して」とか言われたらそっちの方が困る。

周りの知り合いを見ても、大学1年か2年の時に免許を取ってしまって、以後乗ることもなくペーパー化してる人が多い。みんな口々に「免許なんてただの身分証明書だよ」なんて言う。なんかの冗談みたいに言うけど、それってかなりもったいないのでは?と前から思っていた。20万とか30万かけてなんとか取得して、結果がそれではなんとも虚しい。結局は「免許くらいは持っておこう」「時間があるのは大学生のうちだけ」みたいな雰囲気と同調圧力に負けて、目的もなく取る人が大半なんだと思う。


だがしかし、こんなこと言ってる自分も、結局は取ることになった。正直に言ってしまうと、教習行くためのお金は親が出してくれた。僕は元々取る気はないので、ほっといたら行かないままだと思ってのことだと思う。なんで今の親世代の人って、そんなに車の重要性を説くんだろう。やっぱ田舎育ちだからかな。

そんなわけで、僕も大概なんだけど、まぁちょうどバイトもやめた時期だったし暇もあるかと言うことで、しつこく説得してくる親に負けて「じゃあ行ってみるよ」と返事してしまったのだった。


行きはじめてすぐ、僕は後悔した。めんどすぎる。
学科もさることながら、教習は2回目くらいから教官に厳しく指導される。まぁそれがお仕事なんだろうけど、とにかく細かいったらありゃしない。「そこ!確認忘れてる!」「はい・・・」「こんなことも知らないの?ちゃんと運転教書読んでる?」「読んでないッス・・・」「また忘れてる!」「あい・・・」こんな調子である。

そもそも動機がないのに、こんなこと一生懸命やれるわけがない。僕が見てきた「車が運転できる人」は大抵それなりに経験を積んだ人だったので、さらさらっと難なくやってのける人が多かった。ので、「案外楽勝かも」みたいな楽観はあった。甘かった。そんな言われてすぐ器用に何でもこなせるタイプじゃないのは自分でよくわかってたはずなのに、やっちまったなと思った。

教習10回目くらいになっても、僕の運転は相変わらず急発進・急ハンドル・急ブレーキのオンパレードだった。才能ないな~と自分のことながら思いつつ、他の人がどの程度できるもんなのかわからないので、全体の中の自分の位置が全く分からない。ただ教官の反応を見る限り、けっこう劣等生なのは確かだろうと思っていた。


そんな調子でいやいやながら教習に通い、冬休みになって少し期間が開いた。そこで思った。

「行きたくねえ」

と。

こういうとこは自分に正直なので、さっぱり行かなくなった。春休みになって時間ができても「だからなんだ?」くらいに思っていた。乗っても見ないうちから言うのはあれだけど、実際乗ってみて免許取る気がなくなったのなら、行く必要なんて無かろうもん。

ただひとつ心残りなのは、親にお金を払ってもらったことと、結果的に免許を取れなければそのお金はドブに捨てたも同じになるということだった。これだけが、この喉に引っかかった魚の骨みたいな罪悪感だけが、チクチクと僕を責めたてた。どうなるかわからんものは、少なくとも自分の責任の範囲でやるべきなんだとよくわかった。

教習期限は元々9か月あったが、木枯らしの吹く季節に通い始めて年を越し、桜舞い散る日々にうとうとして過ごしているうちに、ついに夏になってしまった。


そしてある日、親から電話がかかってきて「免許取った?」と訊かれた。取ってない、と答えたら、呆れと怒りの入り混じった声が返ってきた。そりゃそうだ。単位足りなくて留年余儀なくされる大学生みたいな気持ちだった。どうすんのと訊かれ、行く気はないと答えた。仕方ないのでお金は返すよ、とも。それで「ハイそうですか」とはならなかったけれど。

結局この後、僕はあと2週間切った教習期限を前に「悪あがき」してみるかと腹を括った。どうせ取れないのが当然なんだから、やるだけやってみようか、と。実はお金が惜しかっただけだが。

次の日、僕は懐かしの教習所に足を運んだ。スケジュールを確認してみると、その日から毎日詰め詰めで通えば教習期限当日にギリギリ合格できるだろうとのことだった。嬉しいような残念なような、複雑な気持ち。一度でも休んだり行かなかったりすればその時点でアウトだ。しかも仮免許すらまだ取っていなかったので、その修了検定にまず合格する必要がある。修了検定は2日後だった。

これあかんやつやんけーと思って諦めかけたが、受けつけのお姉さんが「頑張ってね!きっと取れるから」と励ましてくれたので頑張ることにした。

↑自分に暗示をかけようとする僕。


次の日、まずは修了検定が受けられるかどうかを見る「みきわめ」があった。ここで教官にポンと判子を押してもらわないと、卒業どころか修了検定すら受けられない。前途多難すぎる。

そして1回目の「みきわめ」を受けた結果、「論外」と言われた。当然だがこれだけ期間が開くと、かろうじてできていたものもできなくなってしまっている。「君、そんなんで免許取れるとか思ってんの?舐めてんの?」みたいに言われた。なんも言えない・・・しかし諦めなかった。無理ゲー感が増すほどに僕の中でハードルは下がり、完全に開き直っていた。その日は家に帰ってから運転教書を穴が開くほど眺めてイメージトレーニングした。また検定には学科もあったので、そっちの知識も無理矢理詰め込んだ。伝家の宝刀・一夜漬けである。

それただのドM。


そして検定当日。実技はさすがに緊張してブレーキを踏む足ががくがくしたが(←危ない)、なんとか合格できた。試験直後は案外楽勝じゃーんと思って自信あったけど、点数的にはすれすれだった。学科はもっとすれすれだったと思うけど、なんとか合格していた。こうして最初にしておそらく最大の難関・仮免許をゲットした。

とにかくスケジュールが詰め詰めなので、その日から路上教習だった。これにはビビった。なにしろ3日前まで「俺は一生車なんか乗らねえ」とか言ってやつが、荒っぽい猛者犇めくコンクリートのサバンナに放り出されるのである。しかし路上教習1回目の教官があの「みきわめ」の時と同じ人で、僕が何とか合格したのを知って「頑張ったな」と褒めてくれた。典型的な飴と鞭だけど、やっぱり嬉しい。それでなんとなく肩の力が抜けて、初めての路上はなんとかなった。


路上教習が始まってからは、教官達の指導を前より真剣に吸収した。進路変更が苦手すぎて吐きそうだったが、その他はなんだかんだ運転にも慣れてきて卒検の「みきわめ」は問題なくパスし、卒検が受けられることになった。卒検は運転中何度か「あ、今ミスったな」と思うことがあって一瞬ダメかと思ったけど、意外にそこそこの点数だった。僕の手応えは当てにならない。
こうしてまるっと9か月、期限をギリギリまで使い倒した劣等生は無事卒検に合格した。


こうして振り返ってみると、今回は運に恵まれた面も大きいなと思う。まず「しゃーない、取るか」と重い腰を上げたタイミングがほんとにギリギリで、1日でも遅れていたらその時点で門前払いだったろう。そして教習に通う間、一度でも寝坊したり、台風でおじゃんになれば、その時点でも終わりだった(一回めちゃくちゃデカいのが来そうになってひやひやした)。そして何より、受付のお姉さんが励ましてくれなかったら、あれに背中を押されてなかったらと思うと、なんというか、男に生まれてよかったなと思う。

HUNTER×HUNTER 29 (ジャンプコミックス)

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