「凡庸」は恥である―斎藤孝『人を動かす文章術』

誰も教えてくれない人を動かす文章術 (講談社現代新書)

誰も教えてくれない人を動かす文章術 (講談社現代新書)

読みました。

どういう本か要約すると「みんなブログ書こうぜ」になる。
あるいは「あなたのブログ、ほんとにおもろいですか?」

まぁ実際はブログのブの字も出てこないんだけど、書いてる内容は明らかにそう言っているように読めるのは、僕がこうしてブログ書いてるからこそなんでしょう。


斎藤孝さんの本は今までにも2冊か3冊読んでるんだけど、彼が著書で取り上げるトピックはほとんどといっていいくらい僕の関心ごとセンサーに引っかかる。あーちょうどこういうこと考えてたんだよーみたいな。それは、彼が大学教授をやっていて毎日のように学生と関わっているのが大きいんだと思ってるけど、大学教授なら誰でもこういう本が書けるわけではけっしてないし、そこは僕みたいな学生に対する観察眼の為すところなんだろう。


それで肝心の内容だけど、まずは「いい文章とは、人を動かせる文章である」という定義から入る。

メールを含め、私たちの生活においては、実は、文章力が日々求められています。そこで求められているのは「実用的」文章力ですが、その「実用的」というのは本質的には「人を動かす」という意味なのです。一見拙い文章でも、人の心を動かすのなら、それは力のある文章と言えます。野口英世の母シカの話が良い例です。ポイントは、「文が上手いか、下手か」にあるのではなく、「人を動かすか、否か」にあるのです。


「文章力」と聞くと語彙がたくさんあって難しい表現ができて、論理構成が明確で~みたいなものを思い浮かべる人が多いかもしれないが、本質的にはそれは重要とは言えない。読んだ人に何らかの影響を与えない文章が「いい文章」と言えるかといえば、おそらく違うだろう。また「いい文章」を書くのに必要なのはそういうもの(論理や語彙)ではなく、もっとそれ以前の、書き手の姿勢とか態度の問題だと書いている。例を挙げるなら、何かに「気づく力」とか「発見する力」みたいなものだ。そして大事なのが、それは、実際に文章を書いてみることで養われるということ。

文章を書くなかで養われるのが「気づく力」や「発見する力」なら、文章を書くことで得られるのは「文章力」ではなく「自分なりに物事を切り取り、考える力」だろう。つまりこの本で述べているのは実は文章術の話ではなく、自分なりの視点や考え方を得るための方法だ。

で、それだったらこうしてブログ書いてみるのが一番いいんじゃないかなーと僕は思ったんだけど、ブログという言葉は出てこなかったと思う。読み飛ばした部分もかなりあるからわからないけど。


「いい文章」を少し言い換えれば、それは「おもしろい文章」だと思う。切り口が新鮮だったり、表現が独特だったり、ユーモアがあったり、あるいは一見乱暴とも思える荒い極論でも、おもしろいときはおもしろい。もちろん切れ味鋭いロジカルな文章や初めて見るような言葉で溢れた文章もおもしろいけれど、それを前面に出されると、読む側としてはちょっとノーサンキューって気分になる。


と考えていくと、「いい文章」ってなんなんだろうと思えてくる。絶対に誰でも面白いと思える「いい文章」はないし、その時その時で最適な「いい文章」があるだけだろうが、しかし少なくとも「おもしろくない文章」がどんなものかは大体わかる。一言でいえば「凡庸な文章」だ。

これは僕にはかなり痛いところで「あちゃー」って思った。最近は意識して何とかしようと思ってるんだけど、どうしても優等生的な結論で満足しちゃう部分が僕にはある。実は満足すらしてないんだけど、優等生的な平凡な内容で妥協しちゃうってのは、自分に対する踏み込みが甘いんだと最近思うようになった。無理して思ってもいない極論を書く必要なないけれど、踏み込みが甘かったり、ついつい安易さに流れてしまった文章は自分であとで読み返しても面白くないし、ただキーボートを打つ練習にしかならない。


意識的に「自分なりの価値を出そう」という姿勢のもと書いたり考えたりしてないと、自分の考え方や価値観というものは生まれてこない。奇をてらって本質をはずしてしまってはいけないけれど、「自分はこう考えた」という書き手の態度が見えるかどうかはたしかに、読んでいて(話を聞いていても)面白いと思わされるポイントの一つだよなぁと思う。


この本で紹介されているのは「おもしろい文章」を書くための(あるいはおもしろい視点を得るための)ちょっとしたテクニック、文章術だけど、実は本当に言いたいのは「凡庸な文章を書くな」「(あなたという人が)凡庸にはなるな」ということだ。


これは文章書く機会の多い人、会社で企画書を書いたり、あるいは大学試験のレポートや小論文を書く人に向けた本だ。僕は「企画書の書き方」と「メール術」はどうでもいいので飛ばしちゃったけど。それに『人を動かす文章術』に載ってることを試す場としてブログを書く習慣があるとかなり有効だと思う。すでに書いてる人にとってはテコ入れになりそうなことも多かった。おすすめです。

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