「個人の宇宙」がゆるやかにつながる


ブログを書くようになって2か月。僕は「もともと書くのが好きで、これまでも日記をつけていました」みたいな人ではないので、毎日何を書こうかと必死でネタを探し続けた2か月だった。面白いこと・ものを見つけてきて書くというよりは、自分の中にあるものを切り出してアウトプットする形が多かったように思う。これからはもうちょっと、自分の身の回りから、自分の外からネタを拾ってきたいなぁと思う今日この頃である。

今は亡きスティーブ・ジョブスipodを作り、世界を変えた。ipodが人類にもたらしたのは「個人の宇宙」だ。音楽はそれまで、ラジオやテレビ、CDラジカセによって多くの人に共有されていた。しかし今では、ipodという小さな箱に自分のお気に入りだけを詰め込み、イヤフォンをつけて聴く形が主流である。狭くて小さい自分だけの宇宙を、みんなが持つようになった。ここ何年かで「今年の流行歌」みたいなのがなくなったのもそれと無関係じゃないと思う。いくらAKBがミリオンだなんだと言ったって、実際にそれを口ずさめる人がどれほどいるというのか。僕もみんなと同じくipodに自分の好きな曲だけ詰めて、外出している時でさえ「個人の宇宙」に閉じこもっている。


音楽といえば、僕はMrChildrenが好きである。今年は初めてライブにも行った。いつも聴いている曲が生で聴けてかなり楽しかったけれど、ライブ全体の雰囲気を客観的に見れば、さながら何かの宗教のようであった。ボーカルの桜井さんの歌に合わせ、会場全体が手拍子やコーラスでうねる。一緒にライブに行った友人はミスチルのライトなファンで、「まあまあ好き」くらいらしかった。彼はファンが会場で熱狂する様子を「異様だ」と評した。相当深くミスチルの世界にのめり込んでいなければ、あの雰囲気は耐え難いものだったかもしれない。それこそipodで、ひとりでゆったり聴いていたほうがいいのだろう。それでも僕はライブが楽しかったしまた行きたいなぁと思う。他の人も僕と同じかそれ以上に深くのめり込んだ人たちで、彼らとミスチルとその場を共有するあの体験は、たしかに異様ではあったが、今までにないものだったのだ。極限まで深化された「個人の宇宙」がぶつかってひとつに集まり、大きくなり、熱を帯びたような場所だった。

ブログもまぎれもなく「個人の宇宙」のひとつだと思う。自分が思ったこと、考えたこと、感じたことをみなが好き勝手に書いている。ただ一つipodと違う点は、ブログは読まれることを前提としている、ということだ。こうしてネット上で公開している以上いくら自分が好きで書いていると言っても、他の人に見てもらいたい、読んでもらいたいという欲求があるんだと思う。僕も自分が書いた文章が誰かの目に触れ、反応が返ってくることはうれしい。

感想を、ブログでほしいです。 - 犬だって言いたいことがあるのだ。
こちらのエントリを読んだ。

このグループは、変な集団論理に巻き込まれずに、ゆるく長く続いてほしいな、と言った人がいました。

僕もそうなってほしいなと思います。

ただ自分のことを書くだけでなく他の人たちの世界を垣間見ることができるのが、ブログの面白いところだ。これは自分一人でもくもくと日記をつけていては決して得られない刺激である。たまにコメントなどで(最近はTwitterでも)やり取りがあるのも楽しい。それが馴れ合いのようになるのは嫌だが、同じブログで書くもの同士ゆるーくやり取りしてつながるくらいなら、自分は文章を書く上でいい緊張感を保てる。あくまでブログは「個人の宇宙」である。あまりに関わりが深くなり集団に固有の雰囲気が生まれれると、僕の友人のようにかえってやりにくさを感じるだろう。僕にとって「どこで」書くかというのはあまり重要ではないからだ。付かず離れずで「個人の宇宙」がゆるやかにつながる、そんな場所でなら、僕はこれからも楽しく文章を書けると思う。

今日はバスの中でipodでシャカシャカやりながら、 いぬじん (id:inujin) さんのエントリを読んでいた。
外出する時くらいはイヤフォンをはずし周りをきょろきょろして、何かネタになるようなもの見つけよかなとふと思ったが、結局目的地に着くまでイヤフォンはつけたままだった。ミスチル、早く新曲出してくれ。



小さい宇宙

小さい宇宙

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