「国公立大入試2次の学力試験廃止」のニュースをみて

今日のニュース⇒国公立大入試:2次の学力試験廃止 人物評価重視に―毎日jp

下村文科相は「学力一辺倒の一発勝負、1点差勝負の試験を変える時だ」とし、新テスト創設の必要性を強調。さらに、大学ごとに実施する2次試験について「大学の判断だが(同会議では)2回もペーパーテストをしないで済むよう考えたい」「暗記・記憶中心の入試を2回も課す必要はない」と述べた。

そしてその後の報道⇒文科相「学力試験否定せず」 大学入試での廃止検討に―47NEWS

政府の教育再生実行会議が国公立大入試の2次試験で学力試験の原則廃止を検討するとの一部報道に関し「学力テストを否定しているわけではない。学問の府だから(試験を実施するのは)当然」と述べ、一律に廃止する考えはないと明らかにした。

下村文科相は「2回もペーパーテストをしないで済むよう考えたい」と述べておきながらその後「学力テストを否定しているわけではない」と。この様子を見ての考察⇒観測気球かな?

どうやらまだ様子見っぽい。基本方針とか入試制度改革は本気なんでしょうけど。

今日はこれを見て考えたこと、疑問点など書いてみます。

「二次試験の学力試験廃止」で何がどうなる?―メリットとデメリット

これまでの入試は「暗記・記憶中心」だから、国公立の二次試験をやめて面接や小論文を重視しよう、というのがこの会議と改革の趣旨らしい。もし本当にこの通り事が進んだらどうなるのか考えてみました。

【メリット】

①入試のペーパーテストにおけるプレッシャーは軽減される

②あまり学力に自信がない人・勉強が得意じゃない人でも面接で逆転できるチャンスあり

③本当に勉強したい人だけが大学に行くようになる


①について
「学力一辺倒の一発勝負、1点差勝負の試験を変える時だ」との文科相の発言からすると、これが一番の狙いなんでしょうか。確かにセンター試験での「絶対失敗できない」感は異常でした。マークミスはもちろん、試験当日にインフルエンザにでもかかったらアウトですからね。何回かチャンスがあるなら、不運な出来事で試験が受けられなくなるようなことは減るでしょう。

②について
人には向き不向きがあります。勉強はあまり得意じゃない人だっているんです。かといって運よくスポーツや芸術の才能があるなんて都合のいいことはそうそうない。
何か一つでも得意な、好きな学問があるなら、それへの情熱を面接で訴えることで逆転できるかもしれない。今の入試制度、特に(上位の)国公立なんて、5教科7科目どれもバランスよく高い点数を取る必要がありますからね。得意分野に特化した人材がいたっていいはずだし、面白いのでは?

③について
これは就活のことです。
学力試験が軽減されることで自然と「学歴ブランド」が相対的に今より下がると思われます。
そうなると就職のためにいい大学に行くみたいな人が減って、学問を究めたい人だけが大学へ進むようになるかも。少子化の時代なんだし、良いことです。


【デメリット】

①高校生・大学生の学力は下がる

②入試が就活化する

③就活での学歴格差(大学間格差)が広がる


①について
二次試験がなくなればその分必要な勉強量は少なくなるわけですから、当然、高校生および大学生全体の総合的な学力は落ちるんじゃないでしょうか。上位校ほど二次試験のボリュームは大きいので、それがなくなるとなるとかなりレベルダウンするんじゃないかと。承知の上ですよね、これ。

②について
「面接」とか「小論文」って、まんま就活だなぁと思いました。
よく言われてることですが、そもそも点数重視で人をふるいにかけるのって厳しいけれど公平な試験ですよね。「これだけ点数をとれば合格できる」っていう明確なゴールがあるから、それに向けて戦略立ててがむしゃらに頑張れるのに。逆に就活生はそこが目に見えないから不安だし、苦労してる。

それに大学の受験者って何万人っていますよね。これを入試が行われる一か月そこらでしっかり面接できるんでしょうか。雑な面接で合否が決めれれてしまうのは受験者も怖いと思います。

あと大学入試の面接って何を重視するんですかね?企業ならコミュニケーション能力なんだろうけど、大学入試も同じ?研究者気質でそういうのが苦手な人はどうなるのかな。コミュ障には辛い時代です・・・


③について
面接や小論文を導入したとして、学力試験がなくなるわけじゃないでしょう。となると、やっぱり上位校にはその世代のトップの学力をもった人たちが集まってくる。面接で人物像・人柄もチェックされた人が入試を通過する。

となると・・・あれ?企業で今やってる選考って主に「筆記」と「面接」ですよね?

ってことはこの改革後の入試で、上位大学の生徒は企業が求める人物像により近いものになるんじゃないですか?企業は上位校の生徒からどんどん採用すればいいんです。学力(情報処理能力)・人柄ともに申し分ないですよ、たぶん。
逆に偏差値的にあまり高くない大学には今まで通りの学力、もしくはそれ以下の学生しか受けに来ません。面接で選考すれば人柄だけは保証できるかもですが、結果的に就活での大学間格差が広がりそうです。

まとめ

どちらにせよ今のまま改革が断行されることはないんでしょう。本格的な議論はまだ始まったばかりのようです。この改革自体、受け入れるかどうかは各大学の任意らしいですし。

よく言うように、大学生って(文系は)あんまり勉強しません(僕も御多分に洩れず)。だからってわけじゃないですが、大学受験の1年くらい「暗記と記憶」に集中したって損はない気もします。面接入試を導入に加え大学の単位認定を厳しくすれば、バランスもとれるんでしょうか。ただその面接入試自体が、人員不足であまり現実味がなさそう。

一方で、高校卒業後当たり前のように大学へ行く風潮がなくなって、一年くらい海外放浪して日本に戻ってもすぐに社会復帰できたり、あらためて大学に通ったりしやすい制度を作ってくれるなら面白いのにな、とも思います。

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