意識高い系が気持ち悪いのは「憧れ」=「自身の欲求」だと勘違いしてるから


いわゆる意識高い系の人たちを見てて感じる違和感とか嫌悪感って、その人たちが自分の欲しいものを自分自身ちゃんと理解できてない(あるいは、欲しいもの自体がない)のに、欲しいフリをしてるのが見え見えだからだと思う。憧れ=自分の欲しいもの、やりたいことだと勘違いしてる。


ほんとはそれほどやりたいと思ってないこと、元々その人に動機も欲求もないことに手を出して、さも「興味あります」「尽力してます」って顔をしてるから気持ち悪い。「これが俺の欲求です、叶えたいことです」と言われて、それを裏付ける動機や経験に納得感があればむしろ応援したくなるのだけど、そのへんがあやふやだったりテンプレな理由(社会貢献したいから、みたいな)だったりすると「なんでわざわざ君がそれをする必要があるの?ほんとにそれがしたいことなの?」って疑問が当然出てくる。


またさらに気持ち悪いのは、そういう人たちがなんだかある種の変な暗示にかかってるようにも見えること。「自分のやりたいことはこれだ」って思いこもうとしてるように感じる。無理してませんか?って聞きたくなる。下手にコミュ力やバイタリティある人だとそういう「無理してる感」も誤魔化せちゃうのかもしれないけど。ほんとの意味で意識の高い人は根底に自分の欲求があって、それに基づいた行動がある。地に足ついてるかどうかの違いはそこにあるような気がする。


中身が空っぽだから、その穴を埋めようとして、手近で周りの評判も良さそうな「憧れ」に飛びつき、それが自分の欲しいものだと思い込む。「何者」かになりたいけれど特にやりたいことも欲しいものもない、だからとりあえず「何者」っぽい振る舞いで自分を満たす。しょせんは“ごっこ”だと自覚があればいいけれど、なければ自分を見失う。


たぶん大切なのは、自分の空っぽさを認めること。そしてほんとに欲しいもの、やりたいことは何か注意深く見定めてあげること。情報だけは多い世の中だから、普段から自分の気持ちをきちんと見定めようって意識がないと、意外と難しい。

もちろん、ほんとに空っぽな人なんてそういないだろうし、もし空っぽでも、別に恥ずかしいことじゃない。10代や20代前半でそれがしっかり定まってる人の方がむしろ珍しい。たくさん本読んだり人と会ったりしてだんだん自分でも理解できてくるものだと思う。

何者(新潮文庫)

目指すは「邪道の王道バトル」?『プラチナエンド』 1巻感想

プラチナエンド 1 (ジャンプコミックス)

読みました。

デスノート』『バクマン。』に続き3作目ともなるとさすがに原作者の作家性も鮮明に見えてくる(もともと作家性強いけど)。今回も安定の「頭脳戦×勧善懲悪もの」だ。それ自体いいことでも悪いことでもないし、たぶん漫画家本人としてはメリットの方が大きいけれど、これはやり方工夫しないとなかなか厳しいんではとまず思った。

何が言いたいかというと「『デスノート』と読み味が似すぎてるなー」ってこと。新鮮さはほぼないと言っていい。作画も意識的に『バクマン。』より『デスノート』に近づけてるかんじがするし、自覚的にやってるんでしょうね。

設定的には『未来日記』とかなり似てる。自分と同じ力を授かった神様候補の敵たちと頭脳戦&バトルロワイヤルな話。

ありがちといえばありがちだけど、たぶん大場つぐみが最も得意とするところ。
大場&小畑コンビの漫画を初めて読む人にとってはかなり面白いと思う。前作二つを読んでれば「ここデスノートっぽい!」「こういうのバクマン。でみた!」って場面はたくさんあって嬉しい。

ただ、一方で「うーん・・・これでいいのか?」ってかんじも拭えない。つまりファンとして“大場作品あるある”は読んでて楽しいけど、まさか何も新しいことやらないつもりかなと一瞬そんな疑念がよぎる。下手打つと、今作はよくても次回作以降で完全に飽きられる危険をはらんでる。


でも今作は『デスノート』と違って純粋な頭脳戦ではないんだろうなと思わせる設定もいくつかある。
目に見えない速さでどこへでも飛んで行ける「天使の羽」、人を殺せる「白い矢」・虜にする「赤い矢」。

これだけで、たとえば天使の羽があれば世界中どこへでも飛んで行ける=空中戦ができるってことだし、海でも山でも摩天楼でもバトルフィールドは思いのままということ。相手に矢を刺せるか刺されるかの勝負ならアクションシーンも入れられる。

つまり『バクマン。』言ってたような邪道の王道バトルをやろうとしてるのかなと思った。

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バクマン。 18 (ジャンプコミックス)

1巻を読んだ限り目立ったバトルシーン0だけど、今後の展開次第でどんどんそんな場面が出てきそう。もしそうなるなら過去二作とは違った読み味になるはずだ。そしてタイトルにプラチナ“エンド”とあるのをみると、最終的な結末はもう作者の中で決まっていそう。そんなところも『バクマン。』の漫画中漫画「リバーシ」っぽい。

というわけでなんだかんだ期待してるし早く続き読みたい。なんで月刊誌行っちゃったんだろうなー

【2016年1月】観に行った映画まとめ

先月観に行った映画のまとめ。
傷物語‐鉄血編」「ブリッジ・オブ・スパイ」「グラスホッパー」「ザ・ウォーク」の4本。

傷物語 Ⅰ鉄血編」☆☆☆

傷物語 涜葬版

西尾維新傷物語」の劇場版3部作の第一作め。
60分という短い時間かつ、ストーリー的な盛り上がりも控えめ。バンパイアハンターと一人も戦わずに終わったことには正直がっくりきた。ゆえに「映画を観た」という満足感にはやや欠けてた印象。だけど、TVアニメとは明らかに異なる絵のタッチにワクワクしたり、細かいアニメーションの技術や映像美は流石シャフトで、最初はどこのアート系の映画かと思うほどだった(アート系映画なんて見たことないけど)。とにかく目を楽しませるという一点では間違いなくレベル高いし、よく考えたらアニメシリーズの方だってストーリーというよりは摩訶不思議な映像美を楽しむ方に重点置いてるわけで、作り方としては正しい。キスショットと暦の邂逅、忍野メメの疾走・助太刀?シーンなど見どころもないわけではないし、次も観に行こうと思うには充分かと。
syuraw.hatenablog.com

「ブリッジ・オブ・スパイ」☆☆☆☆

映画チラシ 「ブリッジ・オブ・スパイ」 トム・ハンクス

冷戦中の実話を元にしたサスペンス映画。
前情報ゼロで観に行ったんだけど、観終わった後スピルバーグ監督作と知ってすごい納得した。

世間の冷たい目に耐えながら職務を全うしようとする主人公と祖国への忠義を貫く囚われのスパイの友情。派手なシーンはなく画面は暗く、終始地味な場面が延々と続くのに、飽きずに見せるところがさすが巨匠というかんじ。マーベル映画のような華やかさはないがしかし、これぞヒーロー。
美学のあるやつはかっこいい。

なぜスピルバーグっぽさをかんじたかと後で考えてみたところ、『ターミナル』に非常に近いのだと思い至った。同じくトム・ハンクス主演のヒューマンドラマ。

ターミナル [Blu-ray]

ターミナル [Blu-ray]

syuraw.hatenablog.com

グラスホッパー」☆☆

グラスホッパー スタンダード・エディション [DVD]

原作は伊坂幸太郎の小説。
高校生のころ「ラッシュアワー」を読んで以来、なんとなく伊坂幸太郎に苦手意識があって、そろそろ感じ方も変わってるかもと期待したけどやっぱりピンとこず。もちろん原作を読まないとホントのところどうなのかはわからないし、調べたらストーリーの進め方も原作とはだいぶ違っているらしいのだけど。観終わったあと、何とも言い難い気分になった。

物語は主人公含めた3人の人物がそれぞれ自分の思惑をもとに動く群像劇みたいになっている。サスペンス要素が多くてそこは好みなのだけど、一人だけほとんど魔法に近い特殊能力をもってる人物がいたり、唐突に、なんか哲学的な“それっぽい”セリフを言わせようとしてて意味もなく萎えたり、あと全体的に人物がなに考えてるかよくわかんなかったり菜々緒の演技だけ下手すぎて浮いてたりといまいち物語に没頭できなかった。

ただアクションシーンはかなり見ごたえありで、山田京介がならず者のアジトに乗り込んで次々とナイフ刺し殺していくシーンとかはめちゃめちゃかっこよかった。若さゆえの無鉄砲さ、がむしゃらさなんかもよく出せていたし、この映画一番と言っていいくらい好演だったのでは。

「ザ・ウォーク」☆☆☆☆☆

映画チラシ 「ザ・ウォーク」 ジョセフ・ゴードン=レビット
高所恐怖症の人は見ないほうがいいですね。

1974年、NYのワールドトレードセンターで綱渡りをした男・フィリップ・プティの実話を元にした映画。
3Dということもあり映像は圧巻だった。まじで金玉縮みあがる。そしてこの映画をレンタルして家で観る意味を全く感じない。少しでも興味があれば今すぐ映画館へGOです。

ラピュタじゃないけれど、地に足をつけて生きるってのは人の本能みたいなもので、そこから逸脱したがるってのは間違いなくどこか「狂ってる」んだと思う。でも、そんな狂ったヤツらの話というのはなぜだかこんなにも面白い。地上411メートルの高さで綱渡りをすることを「美しい」と彼は言う。美しさに憑りつかれた人間が死の恐怖さえ凌駕する瞬間の、えもいわれぬ興奮。派手な音楽も刺激的なアクションシーンもない、ただ静寂の中でワイヤーの上を歩む男の姿に心打たれる。ただただ、すごい。

繰り返しますが映画館で3Dを観れるのは今だけなんで、興味があるならぜひ今のうちに。

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